【1年間実績と15年間収益予想あり】住宅用太陽光発電のメリットを再検証してみた

こんにちは!
長野県の建設会社、新津組の代表 新津です。

今回のテーマは太陽光発電。(別名PV:Photovoltaic)
2022年に書いた記事では、各種公的データをもとに太陽光発電の収支を計算していました。
2022.08.18公開「住宅用太陽光発電の収益を計算してみた」

本記事では、自宅に設置した太陽光発電システムが1年間に実際に発電した数値を公開します。
それをもとに、1年間の経済的メリットと、15年間の収益シミュレーションを再計算してみました。
15年間は保証期間内。不具合が発生すると無償修理・交換の対象になる。)

太陽光発電については、世間的にとかくネガティブなイメージが先行しているように思います。
この記事では実際のリアルな数字を包み隠さずお伝えしますので、ぜひフラットな目線でご覧いただければと思います!

今回の目次は以下の通りです。
・自宅のシステム概要と設置図面
・1年目の発電実績と収入額
・15年間収支シミュレーション
・15年間収支シミュレーション(悪条件で)
・まとめ
・おわりに:後編に続く
・(おまけ)参考ウェブサイト

記事は前編・後編の構成としました。
前編となる今回では収益シミュレーションを中心に紹介し、後編では太陽光発電をより効率良く使う方法を検証していきます。

自宅のシステム概要と設置図面

はじめに、自宅の太陽光発電システムの配置図から紹介していきます。
私は合計12.0kWの太陽光パネルを搭載しました。
住宅用の太陽光パネル容量はZEHの平均で6~7kWほど。12kWはかなりの大容量です。

住宅部分(母屋)の屋根に7.2kW、ガレージ屋根に4.8kWと、2グループに分けています。
母屋パネルは真南を向いていて、設置角度は屋根勾配に合わせた5.5寸(28.48度)。
ガレージパネルは真南から西へ24度振れており、設置角度は3.0寸(16.70度)です。

パワーコンディショナー(略称パワコン:PCS)は、母屋が5.5kWの室内用、ガレージが4.4kWの屋外用を使っています。PCSの合計は9.9kWです。
パネルが10kWを超えていても、パワコン出力が10kW未満であれば住宅用として認定されます。
パネル容量>パワコン出力となるように組み合わせる「過積載」という手法を使って、年間の発電量が大きくなるよう工夫しています。

パネル・パワコンの製造元は韓国のハンファQセルズ
1999年ドイツ発祥の世界的太陽光発電メーカーで、アメリカ・ドイツ等でトップシェアを誇っています。
曇りや雨の日のわずかな光でも電気に変えることができるのが最大の特長。
実際に私の家でも、小雨程度であれば日中の電力をまかなう位の発電量を出すことができます。

前述したように、パネル・パワコン含めたシステム全体の保証期間が15年間付いています。
更にパネルの出力保証は25年間あり、規定の発電量を下回った場合、無償修理や交換の対象となります。

1年目の発電実績と収入額

「太陽光発電の利益」についておさらいしておきましょう。
発電して余った電気を売却することによる利益=売電収入 と、
発電した電気を自家消費で使うことで節約した電気代=買電節約 の
総額が、太陽光発電によって得られる利益です。

FIT(固定価格買取制度)による売電単価が年々下がっている現在においては、自家消費による節約をメインとした「自家消費型」でPVを使っていくのが主流なのです。

自宅1年目の太陽光発電の発電と収入の一覧表です。
1年間の合計収益はなんと!約39万円となりました。月平均で約3万2500円です。
売電額と節約額の比は45:55で、自家消費による収入が大きくなっています。

自家消費の電気代単価は、各時間帯の電力使用量と、時間帯別の料金を考慮して決定しました。
具体的には
1.PVとV2Hを併用して7~21時は自家消費で対応していると想定
2.7~21時の各時間帯ごとの電力使用量を、年間実績値より算出
3.毎月の検針票から電気代単価を算出
4.2と3から時間加重平均を取り、月ごとの各時間帯別の電気代単価を算出
という流れで計算しています。(ChatGPTが活躍してくれました)

売電収入額のトップ2は5月の21,148円・4月の18,207円
発電量が多い時期かつ冷暖房をあまり使わないシーズンなので、電気が余りがちになりました。

買電節約額のトップ2は7月の29,292円・8月の24,620円
暑くて冷房をたくさん使う時、つまり日中に多くの電力を消費しています。
PVがなければ電力会社からこの金額で電気を買うしかありませんが、PVがあればこの分の電気代がタダになる、ということですね。

私の場合、太陽光発電設置に掛かった初期費用は税込みで200万円弱でした。
1kWあたりでは16.6万円ほど。この数年でかなり価格が安くなりましたね。
年間収益が約39万円なので、約5年ほどで設置費用の元が取れることになります。
私は工事のタイミングが悪かったため自治体の補助金は使うことができませんでしたが、受け取れていれば更に資金回収のタイミングは早まったと思います。

太陽光発電に対する批判のひとつとして「再エネ賦課金が国民全体の負担になっている」というものがあります。
制度上、住宅用太陽光が再エネ賦課金に与える影響はごくわずかですが、それでも仮に自宅のPVを賦課金の補助なしで使ったとしたらどうでしょうか?
その場合の売電単価は非FITで7.0円/kWhとなります。(中部電力シンプルプラン)
上の表にはありませんが、このケースでの年間収益は約29万円となり、それでも約7年で初期費用を回収することが可能です。
自家消費型の住宅用PVは国の制度抜きでも採算が取れる(可能性が高い)、ということが言えます。

15年間収支シミュレーション

ここでは、システム保証期間内、15年間の収益予想を行っていきます。

各項目の想定は以下の通り。
総じて、かなり厳し目(収入額が少なくなる)の試算です。

出力保持率はパネル保証の下限値。つまり経年劣化が最も早く進むことを想定しました。
自家消費量は1年目と同じ。消費量=生活スタイルは変わらない想定です。
(仮に家電やEV=電気自動車が増えて電力消費量が上がると、自家消費率も増えて収益にプラスに働きます)
自家消費単価=日中の電気代は、年間2%の値上がりとしています。
(日本の電気代はデフレ下でも過去10年で平均年2.5%上がっているので、インフレ時代に2%で収まるかは不明ですが…)

その結果は…!

15年間の合計収入額は驚きの!約570万円。初期費用を差し引いて約370万円のプラスです。

15年を過ぎた状態でパワコンが故障したとしても、交換に掛かる費用は大きく見積もって25万円×2台で50万円くらいでしょうか。
パネルは出力保証付きで25年間使えます。26年目に壊れた場合は、そのまま屋根に載せ続けても特に支障はないかと思います。
26年後は更に高効率のPVシステムが出ているでしょうから、パネルとパワコンを丸ごと刷新するのも良いでしょうね。

今回はシミュレーションを15年間で区切りましたが、実際はパワコンを交換しつつ使い続れば、建物が建っている限りは利益を生み続けてくれるでしょう。

15年間収支シミュレーション(悪条件で)

詳しくは後編の記事で書きますが、私の家は太陽光発電を高い効率で使えていると思います。
効率が悪いケース、すなわち
発電量の低い地域・EVもV2Hも使わない・FIT単価が安い
を想定して15年間シミュレーションしてみました。

「パネル1kWあたりの年間発電量」は、PVの発電効率の指標として良く使われます。
我が家の場合、パネル1kWで年間1,390kWh発電しました。ちなみに長野県平均は1,361kWhです。
今回のシミュレーションでは、想定発電量をパネル1kWあたり1,033kWhにしました。
これは発電量全国最小の青森県の数字です。
(都道府県別発電量は資源エネルギー庁「ZEH実績調査2023」より引用)

自家消費量は、もともとの自家消費量からEV利用分を除いた場合の消費量です。
EVを使わないと自家消費率が落ちて、PVの利用効率が下がる=収益が悪化することに繋がります。
売電単価15.0円は2025年にFITをスタートした場合の金額。
この予想もやはり、利益が低めになるような前提で行っています。

結果は、15年間の合計収入額で約345万円となりました。
それでも、設置費用200万円は約9年間で回収することができます。
たとえ発電量が少ない地域だとしても、自分で電気を作る/作れないには大きな差があるのです。
発電量が少なくても、電気自動車や蓄電池を使わなくても、太陽光発電は経済的メリットがあると言えるでしょう。

まとめ

記事の内容をまとめます。

・1年間の合計収入実績は約39万円
・売電収入額は約17万5千円、買電節約額は約21万6千円で、比率は45対55
・15年間の収支シミュレーションは、合計収入額が約570万円
・設置費用の税込200万円は、約5年で回収できる
・条件が悪くても15年間で約345万円の収入になる

おわりに:後編に続く

前編の記事は以上となります!
12kWと大容量のPVシステムではありますが、多くの方の想像以上の収支が出ているのではないでしょうか?

後編では、この収益を支えた発電量や自家消費率を更に深堀り
太陽光発電を効率的に使うにはどうすればいいのか?を検証していきます。

後編の目次は以下を予定しています。
・利用効率を検証(自給率・自家消費率・買電節約率)
・発電量を検証①(事前予測値と比較)
・発電量を検証②(全国平均・長野県平均と比較)
・太陽光発電は何kW載せるのが良い?

ではまた次回にお会いしましょう!

新津

(おまけ)参考ウェブサイト

太陽光発電に関しては、このウェブサイトを参考にさせていただいています。

東京大学 前准教授執筆「太陽光発電(PV)ファクトチェック」

製造業者やリサイクル業者、消防署など各所にヒアリングし、太陽光発電にまつわる誤解を丁寧に解いています。
PV導入について気になる点があったら、是非目を通してみてください!

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