【設置場所別・季節別詳細データあり】住宅用太陽光発電のメリットを再検証してみた②

こんにちは!
長野県の建設会社、新津組の代表 新津です。

太陽光発電(PV)がテーマのブログ記事、後編です!
前編では、自宅に設置した太陽光発電1年分の実績値をもとに、年間収益と15年間の収支シミュレーションを行いました。

2024.11.18公開「【1年間実績と15年間収益予想あり】住宅用太陽光発電のメリットを再検証してみた」

後編の今回では実績データをさらに深堀り。
発電効率(1kWあたり発電量等)や利用効率(自家消費率等)を検証し、
「どうすれば住宅用太陽光発電を最大活用できるのか?」を考察していきます。

今回の目次は以下の通りです。

・はじめに:自宅の環境おさらい
・発電量を検証①(設置場所別に比較・事前予測値と比較)
・発電量を検証②(パネル1kWあたり発電量・平均値と比較)
・太陽光発電の発電量を最大化するには?
・利用効率を検証(自給率・自家消費率・買電節約率)
・まとめ:太陽光発電はどう設置するのがベスト?
・おわりに
・(おまけ)参考ウェブサイト

はじめに:自宅の環境おさらい

前編と一部内容が被りますが、自宅の太陽光発電(PV)システムと利用環境について簡単におさらいしていきます。

上は自宅パネルの配置図。パネルの搭載容量は合計で12.0kWです。
住宅部分(母屋)の屋根に7.2kW、ガレージ屋根に4.8kWと、2グループに分けています。
母屋パネルは真南を向いていて、設置角度は屋根勾配に合わせた5.5寸(28.48度)。
ガレージパネルは真南から西へ24度振れており、設置角度は3.0寸(16.70度)です。

自宅は延床55坪の4人家族。
居住地は標高700mの東信州・佐久市。冬の最低気温が-15℃になる寒冷地です。
都市ガスを調理と給湯のみに使い、その他、暖房・冷房を含んだ住宅内のエネルギー需要はすべて電気でまかなっています。
電気自動車1台(日産サクラ)を毎日の送迎に使い、V2H(ブイツーエイチ:Vehicle to Home)システムで蓄電池としても活用。
PV&V2Hによって、毎日7~21時は電力会社からの買電をほとんど行わない生活をしています。

参考記事:2024.03.25公開「ニチコンV2H&日産サクラでオフグリッドに挑戦し、挫折してみた」

発電量を検証①(設置場所別に比較・事前予測値と比較)

それでは検証を始めていきます。
まずは設置場所(母屋・ガレージ)ごとの発電量を見てみましょう。
工事前に太陽光発電事業者さんからいただいた、事前シミュレーションとも比較してみます。
※弊社では自社施工での太陽光設置は行っていないため、パネル配置の計画と工事は専門工事業者さんにお任せしています。

発電量の一覧表です。月ごとに、成績が良いところを青色、悪いところを赤色にしてみました。
PVシステム全体の年間発電量は16,677kWhとなっています。
内訳では、ガレージが5,902kWhで母屋が10,776kWhでした。
ガレージに対して母屋のパネル容量は1.5倍ですが、発電量は1.86倍になっています。
発電量の違いには、パネル容量以外の要因もあるように思えますね。

月別の発電量はどちらも5月が最大、2月が最小です。
実は、2024年2月は数年ぶりの大雪。太陽光パネルも1週間ほど雪に覆われてしまっていました。
そのため前後の月に比べて大きく発電量が落ちてしまっています。

事前の発電量シミュレーションと比較すると、実績値は106.7%と上振れしました。
特に9・10月はシミュ比で1.2倍以上と、実際の発電量がかなり大きくなってくれました。
大雪だった2月は、当然ながら予想より大きく落ち込んでいますね。
一般的な話として、業者さんから出るシミュレーションよりも実際は良い成績になることが多いようです。

発電量を検証②(パネル1kWあたり発電量・平均値と比較)

発電量の検証を続けていきます。
PVの発電効率の指標として最も良く使われるのが「パネル1kWあたりの年間発電量」です。
この指標を平均値と比較することで「うちの太陽光発電は効率的に動いているのか?」が見えてくるのです。

ちなみにですが、太陽光発電の1kWあたり発電量は全国平均で1,268kWh/1kWです。中央値では1,243kWh/1kW。
都道府県別では、1位が和歌山県の1,483。2位が沖縄県の1,396(ただし調査数は2つのみ)。3位が長野県の1,361。4位が徳島県の1,356。5位が山梨県の1,351。
下から見ると、47位が青森県の1,033。46位が北海道の1,061。45位が岩手県の1,087。44位が新潟県の1,102。43位が山形県の1,127です。
資源エネルギー庁「ZEH実績調査2023」より

長野県は平均値で3位ではあるものの、県面積が南北にも広く、日照の少ない北陸側に近い地域も多いです。
そのうえで全国トップ3に入っているということは、県内で特に日照の多い東信州は全国で最も発電に適したエリアと言えるでしょう。

パネル1kWあたり発電量の一覧です。
この表から色んなことが読み取れますので、順番に解説していきましょう。

自宅のPV全体では1,390kWhで、これは都道府県別の2位(沖縄県)と3位(長野県)の間くらいです。
いっぽう、ガレージでは1,229kWhと、全国平均をやや下回るくらい。
そして、母屋のみでは1,497kWhと、全国トップの和歌山県すら上回る好成績です。
同じ敷地内に太陽光パネルを設置しているのに、設置方法によってこれだけの差が出てしまうということですね。

ガレージと母屋、長野県平均を月別に見ていくと違いがより分かりやすいので、分析していきます。
発電量の多い時期、4~8月には大きな違いは見られません。むしろ5月・6月はガレージの方がわずかに上回るほどです。
9月になるとガレージと母屋の差が大きくなりはじめ、特に11~2月においては、最大で1.8倍ほどの違いが出てしまうことに。
県平均を見ても、太陽高度が最も落ちる冬至(12月末)の前後には、大きく発電量が下がってしまうようです。
が、母屋パネルだけは冬になってもあまり発電量が落ちない、というのが見て取れます。
母屋パネルは12月でも121kWh/1kW。これは長野県平均の真夏とほぼ同じ効率ということになります。

太陽光発電の発電量を最大化するには?

平均値と比較すると、自宅母屋はかなりの発電量がありそうです。
これから太陽光発電を設置する方は、この母屋の設置方法を参考にされると良いかと思います。

母屋の太陽光パネルがこれだけ発電量が多い理由としては
①パネルが高い位置(2階屋根上)にあるため、隣家や電線の影がかからない
②パネルが真南を向いている
③パネル設置角度が28.48度と、傾斜が強くなっている
 (太陽の高度が下がってくる季節でも発電量を保つことができ、雪も落ちやすい)
④パワコン5.5kWに対してパネル7.2kWで、過積載率が130.9%と高い
 (過積載してもパワコンの出力上限に達するタイミングは1年のうちごくわずか。出力ロスよりも発電量引き上げ効果の方が高い)

ということが考えられます。

①と②は土地の日当たりの問題でもあるので何とも言えませんが、③と④はある程度コントロールできそうです。

③の設置角度について。
発電効率だけ見れば36度くらいにしても良さそうですが、住宅用では28.48度(5.5寸勾配屋根)が実質的な最大値になりそうです。
これ以上屋根勾配を上げてしまうと急勾配屋根になるため、屋根上足場が必要になり設置コスト・メンテナンスコストが上昇してしまいます。
平屋根(陸屋根)で設置架台を使ってパネルに角度を付ける方法もありますが、雨仕舞いで不安があるのと、風圧が強くなり架台が大型化してしまうので、あまりおすすめできません

④の過積載率について。
日射量が多い地域では120~140%、日射が少ない地域では140~160%が目安です。
PVシステムで一番高価なのがパワコンで、パネルを増やすことによるコストアップはそこまででもないので、設置コスト面でも過積載は有利になります。
とは言え、太陽光発電において過積載はもはや一般的な手法
業者さんからの提案は最初から過積載前提だと思いますので、ここはあまり心配しなくても良さそうです。

利用効率を検証(自給率・自家消費率・買電節約率)

自宅の太陽光発電はかなり発電量が多めということが分かりました。
今度は、発電した電気をより効率的に使う方法について検証していきます。

前編でもお話したように、現在の太陽光発電は余剰分を売電するよりも、自家消費をメインにする方がコスト効率が高くなります。
つまり電気使用の効率化は、いかに自家消費率を高めるかがポイントです。

利用効率の一覧表のなかで最も見るべきはやはり自家消費率ですが、先に自給率と買電節約率にも簡単に触れておきます。

自給率は、家庭で使用した電力量を発電量でどれだけカバーできているかの指標です。
年間では家で11,409kWhの電気を使っているのに対し、発電量は16,677kWh。
自給率は146.2%となるので、電力面ではゼロエネルギーを余裕をもって達成していることになります。
発電量が多く、電力使用が少ない5月では自給率249.0%!使った電力の実に約2.5倍を生み出しています。

買電節約率は、電力会社から買う電力をどれくらい節約できているかの指標です。
使用量にかかわらず払う基本料金があるので、節約率イコール電気代削減率ではありませんが、それでも年間で68%の使用料が節約できています。
特に、日中にエアコンで電力を使う夏が、もっとも節約率が高くなるようです。

自家消費率は、発電した電力のうちどれくらいを自分で消費したかの指標です。
計算式は【(発電量 - 売電量)÷ 発電量】
一般的には、パネル容量が大きくなるほど自家消費率は小さくなります。
目安としては、パネル4kWで自家消費率49%。パネル10kWで自家消費率27%です。
参考:国交省「太陽光発電設備の一次エネルギー消費量削減効果について」

佐久平PHのパネル容量は12kWですが、自家消費率は38%と大きめになっています。
その秘訣はずばり電気自動車(EV)の活用です。
EVを蓄電池として使うV2Hシステム。これを太陽光の受け皿とすることで、余剰電力を減らし、自家消費率を高めているのです。
1日あたりの平均で、約10kWhを蓄電・走行分としてEVに充電しています。
仮に自宅でEVを使わない場合は、自家消費率は18%とほぼ半減してしまう計算になりました。

自家消費率を高め、太陽光発電を最大活用する手段としては、電気自動車が最も有効だと言えます。
新築時にEVに乗っていなくても、将来を見越して駐車場へ空配管を回しておくのをオススメします。
私の経験としては、V2Hはあってもなくても構いません。自分の好きな車がV2Hに対応していて、災害対策をしたいのであれば導入を検討するのが良いと思います。

次点ではエコキュート(ヒートポンプ式温水器)の日中利用が挙げられます。
タンク容量や家族の数、外気温によっても違いますが、1日あたりの電力量は2~4kWhくらいでしょうか?
(私の家ではエコキュートを使っていないので正確な数字は出せませんが)
エコキュートを導入する際はぜひ太陽光発電との組み合わせを検討していただきたいと思います。

自家消費率を高めるために、蓄電池はどうでしょうか?
住宅用蓄電池はまさに今、猛スピードで発展している技術です。
低コスト・高機能の商品が次々出てきますので、導入のタイミングはとても難しいです。
まずは太陽光パネルをたくさん載せることに注力するのが良いかと思います。

まとめ:太陽光発電はどう設置するのがベスト?

太陽光発電は日本のどの地域でも最大限載せるべき、というのがこのブログの結論です。
南面に向け、傾斜角を30度に近付け、パワコン9.9kWにパネルを過積載しましょう。
太陽光パネルはたくさん載せれば載せるほど、保証期間内の総収入は大きくなる傾向があります。
自家消費率を高めるため、EVやエコキュートを導入することを推奨します。

ひとつ注意点としては、年間の売電収入を20万円未満に抑えることが必要です。
売電収入は雑所得にあたり、経費を除いた収入額が20万円を超えると所得税が発生し、確定申告が必要になってしまいます。
(減価償却費等を含めた経費が考慮されるため、売電20万円イコール確定申告、という訳ではありません)

参考:国税庁「自宅に設置した太陽光発電設備による余剰電力の売却収入」

では、売電収入が20万円に達するパネル容量はどれくらいになるのか?
太陽光発電をこれから設置する場合、2025年度FITの売電単価15.0円/kWhが適用されるかと思います。
これをもとに全国平均の発電量1,268kWh/1kWで逆算していくと、
自家消費率20%でパネル容量は13.14kW、自家消費率30%だとパネル15.02kW、という結果になりました。
一般住宅では屋根面積の関係上、ここまで大きな容量を載せるのは難しいでしょう。
いざ計算してみると、売電20万円を気にする必要はあまりないかも知れませんね。

ともかく空いている屋根には目一杯太陽光パネルを載せるのがオススメです!

おわりに

長くなってしまいましたが、今回のブログは以上となります。
とかく悪いイメージがある太陽光発電ですが、正しく使えば住まい手にとって大きな利益になります。
「光熱費のかからない快適な家」を実現するためには、断熱・気密と並ぶくらいの重要パーツなのです。

この記事で公開している各種データをもとに検討を行っていただき、十分な納得の上で太陽光発電を導入していただければ嬉しいです。
ではまた!

新津

(おまけ)参考ウェブサイト

太陽光発電に関しては、このウェブサイトを参考にさせていただいています。

東京大学 前准教授執筆「太陽光発電(PV)ファクトチェック」

製造業者やリサイクル業者、消防署など各所にヒアリングし、太陽光発電にまつわる誤解を丁寧に解いています。
PV導入について気になる点があったら、是非目を通してみてください!

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