こんにちは!新津組)新津です。
※2024.4.1追記
2024年度は昨年から制度変更は無いようです。
長野県では2022年度より「信州健康ゼロエネ住宅」助成金制度がスタートしています。
県民の健康増進と住宅の省エネルギー化・脱炭素化を進めるため、一定の基準を満たした木造住宅に助成金が交付される制度です。
2023年度では、制度のいくつかの点に変更が入りました。
全般的に使いやすく改善されたところが多いようです。
今年の最新情報を反映し、重要なポイントについて解説していきたいと思います!
※去年の解説記事はこちら。
記事内の画像は県の公式サイトから引用させていただきました。
また、一部のテキストは去年の記事のものをそのまま使っています。
主な変更点まとめ
- 助成額が最大150万円から200万円に拡充
- 実績報告の期限が年度をまたげるように緩和
- 建売住宅も助成対象に
- 壁量計算だけでなく、耐震等級2以上でも助成対象に
- 断熱性能向上による加算額が大幅に上昇
- 長期優良住宅の取得で助成額がアップ
「信州健康ゼロエネ住宅」の補助金額は?
補助金の額は50万円~200万円。
ただし、太陽光発電設備(3kw)や木質バイオマス利用暖房設備(薪ストーブ等)を設置できない場合、補助額は40万円~170万円となります。
補助額の上限が去年の150万円に対し、今年は200万円に増額されました。
太陽光発電等を設置できない場合の上限額が、去年の80万円から今年は170万円に大きく増えました。
「信州健康ゼロエネ住宅」の開始時期は?
2023(R5)/4/15~2024(R6)/3/15がR5年度分の受付期間です。(予算額に達し次第終了)
実績報告の期限は、従来はその年度内と忙しかったのですが、今回からは助成金額確定から1年以内の提出でOKに。かなり余裕ができました。
工事契約・着工後に県(建設事務所)に補助金の交付申請を行い、書類審査を経て交付が決定されます。
今年からは原則、現場審査は実施せず、全て書類での審査になるようです。
「信州健康ゼロエネ住宅」の対象となる建物は?
県内の地域工務店のつくる木造の新築住宅、およびリフォームが対象です。
鉄骨造、鉄筋コンクリート造や、大手ハウスメーカーの住宅は対象外です。
従来は木造在来のみが対象でしたが、今回から木造住宅全般、つまりツーバイフォー工法も含まれるようになりました。
今年からは申請者が「建築主」ではなく「事業主」に変更になりました。
それにより、注文住宅だけでなく分譲住宅(建売住宅)でも補助金が受け取れるようになりました。
住まい手にとっては、高性能住宅を手にするチャンスが広がったと言えますね。
また、国の新築補助制度(こどもエコ住まい支援事業、グリーン化事業、ZEH化支援事業)と併用することはできません。
去年と同じく、賃貸住宅は対象外となっています。
国庫を財源としない市町村単位の補助金と併用することは可能です。
例えば佐久市では、太陽光パネル補助金や、ペレットストーブ補助金と合わせて申請できます。
詳しくはお住まいの自治体に問い合わせると良いでしょう。
「信州健康ゼロエネ住宅」の基準とは?
基準は全14項目。そのうち9項目は必ず備えるべき基本項目。
残り5項目は選択項目で、これを満たすごとに補助額が追加されます。
基本項目を最低基準で満たすと+50万円。先導基準にすると+90万円。選択項目を全て達成すると+60万円です。
選択項目をフルに満たすと計算上は+70万円ですが、補助対象となるのはそのうち60万円までです。
基本項目は外皮性能(UA値)、長野県産木材の使用量、一般向け見学会の開催、など。
ほぼ去年までと変わりませんが、耐震性能については条件が緩和されました。
のちほど解説します。
基本項目の1~4までは説明の必要はないかと思います。
次項では、5~9までの基本項目と、1~5の選択項目を個別に解説していきます。
基本項目解説:外皮性能(UA値)
要求されている外皮性能は、国の断熱等級と連動しています。
最低基準=等級5、推奨基準=等級6、先導基準=等級7です。
各等級の解説については別のブログ記事で書いています。
快適性と省エネ性、将来の資産価値を考えれば推奨基準=等級6以上を狙いたいところ。
最低基準から推奨基準にすることで70万円が、先導基準では90万円が加算されます。
ちなみに、去年の加算額は推奨で+20万円、先導で+40万円。
去年から今年にかけての増額分50万円はここに割り当てられていることが分かります。
「断熱が重要」というメッセージがより強くなりましたね。とても良い変更だと思います。
基本項目解説:県産木材の利用
基本項目は、長野県産の木材を建築用材3㎥または仕上材30㎡として使用すること。
3㎥は、家の大きさにもよりますが、構造材の10~15%程度を県産材にすれば達成できます。
仕上材30㎡は、外壁の一部を県産材にすれば十分でしょう。(延床30坪、総2階の家の外壁が約150㎡ほど)
基本項目解説:耐震性能
去年までは(ア)壁量1.25倍 のみが対象となっていました。
住宅の耐震性能を判定する方法はいくつかあり、壁量計算はもっとも簡易的なものです。
より精緻な計算方法である許容応力度計算を行った場合、ゼロエネ住宅の助成対象外になりました。
昨年までの制度では、構造計算をきっちり行うと損をする、という逆転現象になっていたのです。
それもあってか、今年からは別の条件も加わり、より実態に即したものへと変わりました。
(イ)品確法による耐震等級2以上、もしくは (ウ)長期優良住宅の認定取得 で耐震項目を満たすことができます。
基本項目解説:災害危険区域及び土砂災害特別警戒区域の範囲外
災害リスクの低減として、ハザードマップの外側の土地に住宅を建てることが求められています。
残念ながら、大規模な浸水や土砂崩れに対して建築は無力です。
自治体が発行するハザードマップを確認し、危険なエリアを避けるようにしましょう。
基本項目解説:再生可能エネルギー設備等の設置
3KW以上の太陽光発電パネルの設置、もしくは薪ストーブやペレットストーブを設置する必要があります。
地域条件等により設置が難しい場合でも補助金は支給されますが、補助金上限額が下がってしまいます。
また、太陽光発電はPPA(屋根貸し)は対象にならず、自己資金で設置する必要があります。
薪ストーブ等も認証を得た製品のみが対象となるため注意してください。
選択項目解説:県産木材の追加使用
県産材を建築用材にして、建物延べ面積の1㎡あたり0.12㎥使用で+10万円。0.16㎥使用で+20万円です。
延床30坪≒100㎡なので、0.12㎥/㎡は12㎥。これは構造材全体の40~60%程度。
0.16㎥/㎡は16㎥。構造材全体の50~80%程度となります。
構造材を県産材に変えることによるコストアップをこの加算分でカバーできるかはかなり微妙なところです。
各施工会社さんに見積もりをいただいてから判断されるのが良いかと思います。
選択項目解説:伝統技能を活用
2つ以上の伝統技能を取り入れることで+10万円の加算になります。
左官仕上げ(40㎡以上)、瓦ぶき、木製建具(見付面積5㎡以上)、畳(6畳以上)。
ここから2つ以上を選ぶ必要があります。
選択項目解説:再生可能エネルギー設備等を導入
太陽熱給湯設備もしくは蓄電池の設置で+10万円の加算です。
太陽熱給湯設備は集熱面積4㎡以上のもの。
真空管タイプの集熱器はこの集熱面積が狭く算定され、加算条件に満たない場合があるので注意です。
蓄電池は4kWhかつ、定置型で未使用品であること。V2HとEVの組み合わせは対象外と思われます。
選択項目解説:県が定めるゼロエネルギーを達成
木質バイオマス暖房(薪ストーブ等)を使って「長野県が定義するゼロエネルギー」を達成した場合、+20万円が加算されます。
薪ストーブやペレットストーブを設置すると、長野県の独自ルールで暖房設備の消費エネルギーを70%削減できるものと見なします。
この状態の一次エネルギー消費量を、太陽光発電等で生み出した再エネで100%相殺できれば、「長野県が定義するゼロエネルギー」達成となります。
とは言え、エネルギー計算に国交省Webプログラムを使うこともあり、ゼロエネルギー達成のハードルはかなり高いです。
先導基準(UA値0.20)の住宅でも、太陽光パネルの容量は8kWほど必要になるかと思います。
平均的なパネル数の倍ほどを載せることになるため、屋根形状に制限が出ることも考えられます。
選択項目解説:長期優良住宅認定の取得
今年から追加になった項目です。長期優良住宅を取ることで+10万円になります。
長期優良で耐震性能の証明を兼ねることもできるため、積極的に狙いたい項目ですね。
オススメの取得項目
最後に、私の個人的オススメの項目を書いておきます。
1.基本項目を満たして50万円
2.断熱性能を先導基準にして+90万円
3.左官仕上げ壁と畳を入れて+10万円
4.太陽熱集熱器を入れて+10万円
5.長期優良住宅を取得して+10万円
6.ガレージ屋根等も使って大容量の太陽光パネルを置き、ペレットストーブも入れてゼロエネ達成で+20万円
の、合計補助金額190万円コースです。
国の「こどもエコすまい支援事業」は最大100万円の補助なので、
最大金額は「信州健康ゼロエネ住宅」の方が多くなることになります。
ただし、申請業務は県補助金の方が煩雑になります。
補助金制度を利用したい場合は建築会社さんに早めに相談するのが良いでしょう。
解説は以上です。
制度の詳細は、記事始めに県のサイトをリンクしてありますので、そちらからご確認ください。
長野県での家づくりで使える補助金制度としてはかなりお得なものとなっています。
より使いやすく改善していこうという県の意識も感じ取れる、良い制度だと思います。
この記事を参考に、最大限活用していただければ幸いです!
新津
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