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(2024.9.20追記)
「パッシブハウスに1年間住んでみた」シリーズを公開しました!
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こんにちは。
長野県の建設会社、新津組 代表の新津です。
パッシブハウスに住んで4ヶ月のリアルなデータを公開するブログ記事、後編です。
今回のテーマはずばり
「マンションからパッシブハウスに住み替えて、光熱費がどれくらい安くなったか」
です。
記事が長くなってしまったので、最初に結論を持ってくる構成にしました。
お急ぎの場合はそこだけ読んでいただければOKです!
記事の後半には電気代・ガス代の明細書などを添えて、消費電力量やガス使用量を月別に解説をしています。
マンションの電気使用量、電気代も公開しています。
長野県に移住を検討されている方は、東信エリア賃貸住宅での光熱費の参考になるかもしれません。
さらにお時間のある方は、前編:温度・湿度編と合わせてお読みください!
面積3倍・容積4倍の木造住宅に引っ越しての電気代・ガス代は?
鉄筋コンクリート造のマンションから、徒歩圏内に新築した木造戸建て(パッシブハウス)に住み替えました。
マンションはオール電化、戸建ては電気と都市ガスを併用しています。
居住空間の広さとしては、床面積は約3倍に。天井高を考慮した容積では約4倍になりました。
電気代・ガス代合計の負担額は、マンション時代に比べて
9月は15,554円の得。(太陽光発電の売電を除いても1,053円の得)
10月は28,017円の得。(同、13,108円の得)
11月は29,388円の得。(同、17,692円の得)
3ヶ月合計で72,959円の得に。月平均では24,320円ほど家計の負担が減りました。
ちなみに、賃貸マンションの月々の支払いは家賃・共益費・駐車場を含めて91,125円。
電気代・ガス代と合計すると、平均して月に115,445円のお金が浮いた計算になります。
ひと月の消費電力を床面積1㎡あたりで比較すると、
マンションが14.2kWhに対し、パッシブハウスが1.3kWh(太陽光発電で削減される前の使用量では4.5kWh)でした。
消費電力が約90%削減できています。
以下の項では、各建物の詳細を示しつつ、各月ごとに電気使用量等を見ていきます。
旧居(鉄筋コンクリート造マンション)と新居(認定申請予定パッシブハウス)
各建物の面積は
旧居の専有面積59.4㎡ 対 新居の延床面積182.56㎡
旧居の容積136.62㎡(天井高2.3mと仮定) 対 新居の容積541.48㎡(床下0.87mを含む)
旧居と新居では、面積は3.07倍、容積は3.96倍に大きくなっています。
マンションは2009年竣工の鉄筋コンクリート造。住まいは2階の角部屋の2LDK。
長野県内の東証上場建設会社によるブランドマンションです。
上でも書きましたが、月の支払額は家賃・共益費・駐車場を含めて91,125円。
佐久平エリアの賃貸物件としては、平均よりやや高級寄りといったところです。
旧居はオール電化なのに対して、新居は電気と都市ガス併用。
新居は冷暖房に電気を使い、給湯と調理に都市ガス。給湯は太陽熱温水器で補助しています。
佐久平パッシブハウス(予定):建物スペック詳細
建築地:長野県佐久市(省エネ区分3地域 標高700m)
構造:木造在来2階建 許容応力度計算による耐震等級2 常時微動探査による固有周期0.12秒
延床面積:55坪(181.6㎡)ガレージ除く
パッシブハウス基準値:暖房需要9.80 冷房需要16.12 気密性能0.17回/h
外皮性能:UA値0.21(ヒートブリッジの影響を含む計算値0.205)
C値:0.1(測定値0.055)Q値1.06
太陽光発電:パネル12.0kW パワーコンディショナー9.9kW
(母屋パネル7.2kW PCS5.5kW & ガレージパネル4.8kW PCS4.4kW)
換気・空調:Zehnder Comfohome(ゼンダーコンフォホーム)CHM200
給湯:太陽熱集熱器・ガス給湯器(エコジョーズ)
※ペレットボイラーは調整中のため、木質バイオマスによる給湯補助・暖房補助・換気デフロスタ機能は使っていません。
オール電化マンション3年間の平均電気代
中部電力のサイトから電気代・電気使用量のcsvをダウンロード、3年平均で月ごとに整理した表です。
一番電気を使っていないのが9月で、使用量592kWh、電気代15,634円。
対して、最も電気を使うのが12月で、使用量1,531kWh、電気代43,614円でした。
平均的な家庭より消費量はかなり多めかもしれません。
子どもが誕生した時期なので、赤ちゃんの快適性最優先でエネルギーを使った結果でしょうか。
・2009年製の電気温水器が多くの深夜電力を使っていた
・2009年製のエアコンで冷暖房を連続稼働していた
・スチーム加湿器×2台で冬の湿度をむりやり保っていた(アルミサッシが常に結露)
・コールドドラフト防止で窓にDIY内窓&ホットカーペット×2(それでも足元が冷えた)
…というように、最低限の温度・湿度を維持するのにも大きなエネルギーを使っていました。
補足:寒冷地での賃貸暮らしの実態(これでも平均より上)
冬の北側寝室アルミサッシ。
加湿器を使うと、アルミサッシから水がしたたるくらいの結露が起こります。
空気中の水分が結露として奪われるため、加湿器を常に稼働しても湿度40%にも届きませんでした。
冬の北側寝室を外廊下から見たところ。
溜まった結露水が、引違い窓の隙間や水抜き穴から外へ漏れ出し、寒さで凍結しています。
エネルギーをたくさん使い、お金を払って外の氷を作っているようなものですね…。
換気システムは3種換気。おそらく賃貸物件でもっとも良くあるタイプですね。
給気はリビングの給気口と、サッシの換気カマチ。排気はトイレと浴室の24時間換気。
冬は冷たい風がダイレクトに入り、とても不快になります。
かと言って換気を絞ると室内のCO2濃度が上がってしまいます。
結局は、暖房の温度を上げて寒さをしのぐことに繋がってしまっていました。
新居のガス代・太陽光発電売電額の一覧
ここからは新居パッシブハウスでの光熱費関係を見ていきます。
各月ごとの電気代の前に、まずはガス代と太陽光発電の売電額を一覧で公開します。
こちらはガス代。
使用した月の翌月に請求が来るため、ここで表記されている「2023年9月」は実際には8月分の使用量にかかるお金になっています。
これら各月のガス代を電気代と合算させたものが光熱費となります。
こちらは売電額のグラフ。
私の場合、太陽光発電で余った電力は1kWhあたり17.0円で買い取ってもらえます。
対して、電力会社から電気を買電する際の1kWhあたり単価は35.45円です。(8月~11月の平均値)
なので、基本的には売電するよりも、家庭内で発電分を消費して買電量を削減するのがお得。
晴れている日中に積極的に電力を使うようにするのがいいですね。
9月の電気使用量を比較:電気契約プラン変更前
新居9月の電気代・ガス代の合計は14,581円。旧居は15,634円でした。
この月の最高気温は36.1℃(佐久市9月の観測史上最高)、最低気温は9.9℃でした。
室内はおおむね26℃±1℃、相対湿度45%(絶対湿度11g/㎥)の状態です。
電気使用量は、新居が869kWhで旧居が592kWh。
ここでの使用量には新居での電気自動車=EVの充電分は含まれていません。
使用量が大きい要因は、床下の通風用に動かしている送風機(約130kWh)が挙げられます。
買電量(電力会社から電気を買った量)は太陽光発電で節約できます。
そのため、実際に請求のあった(EV充電分も含んだ)電力使用量は325kWhに留まりました。
電気代としては12,595円です。
ガス代は1,891円。使用量は8㎥でした。
売電額(太陽光発電で余った電気を電力会社に売ったお金)は14,501円。
支払いとの差し引きで、9月の実質負担額は80円となりました。
マンション時代と比べて15,554円改善されています。
電力契約プランは、新居が中部電力「従量電灯C 15kVA」。旧居が中部電力「スマートライフプラン 10kVA」です。
新居の初期プランは電気工事屋さんによる設定。
万一にでもブレーカーが落ちないようにかなりの余裕を見て、契約容量が大きいプランになっています。
そのため基本料金だけで4,455円も掛かってしまっています。
次月以降は契約プランを小容量のものに変更しています。
10月の電気使用量を比較:契約プラン変更とV2Hの稼働開始
新居10月の電気代・ガス代の合計は9,384円。旧居は22,492円でした。
この月の最高気温は25.0℃、最低気温は0.6℃。
日中にわずかに冷房を使うだけで、ほとんどの時間は換気モードで問題なく過ごせました。
電気使用量は、新居が835kWhで旧居が905kWh。
(上のグラフは住宅内の回路ごと消費量なので、EV充電は含まれていません)
広さ4倍の家になっても、使用量がマンションよりも低くなりました。
最も大きい要因は、マンションは10月で暖房を付けたが、新居では無暖房で過ごしたことです。
回路ごとの消費で見ると、やはり床下送風機の消費が大きいのが分かりますね。
通常、佐久エリアでは10月から暖房が必要な寒さになってきます。
(2023年10月では、22日に最低気温0.6℃。最低気温の月平均が6.6℃)
断熱性が高く熱交換換気を使っているパッシブハウスなので、無暖房期間がとても長く、結果として暖房に使う電力を大きく減らすことができるということですね。
買電量は、V2H(EVを蓄電池として使うシステム)が稼働したこともあり、月で155kWh。
電力消費量を太陽光発電で60%削減、V2Hで22%削減。残った18%が買電量といったところです。
電気代は6,935円。ガス代は2,449円で使用量11㎥でした。
旧居ではお湯を沸かすのに深夜電力を使いましたが、新居では太陽熱温水器がガス使用量を大きく抑えてくれているようです。
売電額は14,909円で、10月は実質負担額ゼロで、収入が5,525円。
エネルギーを気にしない生活をしつつ、お財布に5千円が入ったことになります。
マンション時代と比べると月に28,017円の家計改善です!
電力契約プランは、月の途中で中部電力「スマートライフプラン夜とく 10kVA」に変更しました。
契約容量が下がった分、基本料金を大きく落とすことができます。
11月からは集計日の初めから新プランでの電力料金請求となってきます。
11月の電気使用量を比較:暖房シーズン突入
新居11月の電気代・ガス代の合計は10,274円。旧居は27,966円でした。
この月の最高気温は26.3℃、最低気温はマイナス3.5℃まで下がるようになりました。
電気使用量は、新居が764kWhで旧居が1,030kWh。
(上のグラフは住宅内の回路ごと消費量なので、EV充電は含まれていません)
集計期間(11月10日~12月10日)でもっとも寒くなったのは、12月3日のマイナス6.8℃です。
いよいよ暖房をスタートさせましたが、電気使用量は9、10月よりも少なくなっています。
暖房を使うと言っても、稼働するのは気温が下がる午前0時~朝6時の間くらい。
朝の最低気温が2℃くらいであれば無暖房でも室内22~23℃をキープできます。
消費の大きい床下送風機を11月に停止したこともあり、暖房を使用しつつも消費電力を少なくすることができました。
※送風機は、12月以降はSwitchBotプラグミニによる遠隔タイマー運転で、太陽光発電の動く10時~14時に稼働させることにしました。
買電量は月で256kWh。暖房が動く夜間は電気を買ってくるため、10月よりは多めです。
電気代は6,428円。ガス代は3,846円で使用量20㎥でした。
夜間電力の安いプランに切り替え、買電は21時~翌7時のみ行うようにV2Hを設定しています。
そのため、買電量は多くなっても電気代は安くなりました。
ガス使用量は多くなっています。冬になって太陽熱温水器の出力が落ちていることと、キッチンに慣れてガスオーブンをたくさん使うようになったからだと思われます。
売電額は11,696円で、11月も引き続き実質負担額ゼロ。収入が1,422円です。
マンション時代と比較して、月の負担額は29,388円軽くなりました!
12月電気代は集計前なので参考値
12月の電気代は翌月12日に確定するので、12月28日時点での予測値となります。
中部電力のサイトでは電気代8,500円となっています。
ガス代4,000円として、電気代・ガス代の合計で月に12,500円ほどになるでしょうか?
売電額は11月より更に下がって10,000円とすると、12月の実質負担額は2,500円くらいになりそうです。
さすがに支払いが発生するようになりました。逆に言うと1年のうち冬の数ヶ月しか光熱費がかからない、ということに。
マンション時代の負担額が43,614円だったので、月に約41,000円ほど改善されるという予想になりました!
おわりに
以上、8月から12月までの光熱費について見ていきました。
生活空間が大きく広がったにも関わらず、光熱費が季節問わずに下がっているのがお分かりいただけたかと思います。
また、寒くなればなるほど、元の住まいと大きく差が広がる結果になりました。
冬に使うエネルギーを効率的に節約できているということですね。
冬季の経済的メリットが月に4万円以上にもなるのには驚きです。
今後も定期的に光熱費データを公開していきたいと思います。
長い記事を最後まで読んでいただきありがとうございました!
新津
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