パッシブハウス施工日誌⑦ ~土台敷き・基礎内断熱編~

今回もよろしくお願いします!
新津組)新津です。

佐久平パッシブハウス(予定)では「基礎内外断熱」方式を採用しています。
前回の施工日誌では基礎コンクリート外側の断熱工事の様子を書きました。
今回の記事では基礎コンクリート内側の断熱についてレポート。
建物の、まさに「土台」となる重要な部分についても書いていきます!

過去の施工日誌は以下のリンクよりご覧いただけます。
施工日誌①概要編
施工日誌②地盤調査編
施工日誌③地盤改良編
施工日誌④鉄筋工事編
施工日誌⑤基礎・コンクリート工事編
施工日誌⑥基礎断熱・発泡ガラスボード編

基礎の断面図は上の図の通り。
図面上ではネオマフォームt=80となっていますが、
実際はt=50、つまり50mm(5cm)厚のものを施工していきます。
その理由については後ほど。

土台敷きは水平に

上は基礎に土台となる木材を敷き込んでいる様子。
基礎コンクリート天端の仕上げの精度には限界があり、
土台をそのまま敷くだけでは傾きが発生してしまいます。(それでも1~3mm程度ですが)
その隙間に調整版を差し入れ、土台が完全な水平を保つようにしています。
土台の精度が、この上に建っていく建物全体の精度を左右するのです。

土台の樹種はヒノキを基本としています。
ヒノキは耐久性・耐シロアリ性が高く、日本では古くから建物の土台として一般的な樹。
近年は、ベイツガ材に防腐材・防蟻材を加圧注入したものが(コスト面で優秀のためか)
多く使われる傾向にあるようですね。
詳しくは後述しますが、今回の物件では防腐・防蟻処理はホウ酸にて行います。
注入処理よりも更に長期の耐久性と、人体への安全性向上を期待してのことです。

基礎断熱の気密処理

上は現場作業時に使用した概要図。
どのように基礎で気密を取り、
どのように建物外壁に気密層を連続させていくか、の説明ですね。

日本でもっとも一般的な「床断熱」工法は土台下に通気用のパッキンを入れますが、
この建物は「基礎断熱」工法であるため、土台下での通気は行わず、
床下は密閉して気密を取る必要があるのです。

気密処理のポイントとなるのが気密パッキン
今回はジェイベックさんの気密レールを使用しています。

2列のゴム材と気密シート(先張りシート)が一体となった製品で、
基礎コンクリートと土台の間に挟み込んで密着させることで気密を取ることができるのです。
シートは土台の内側から巻き上げて室内に引き込み、
外壁内側に施工する気密シートと重ね合わせて気密層を連続させて行く形です。

重い木製サッシは特注土台で支える

建物南面の一部の土台は特注です。
材種は耐荷重性を重視して、ベイマツの集成材。
通常の土台は幅120mmのところ、幅300mmとなっています。

この場所には中庭に繋がる大型の木製サッシ(幅7800mm × 高2200mm!)が設置予定。
窓自体が大きく、樹脂製よりも重い木製であるため、総重量は何100kgにもなります。
日射取得を最大化し、熱橋(ヒートブリッジ)の影響を最小化するため、
窓の設置位置は基礎より少し外側に飛び出す形での取り付け。
通常の幅の土台では窓のかかり代が小さすぎて、安定した形で取り付けることが困難に。
窓をしっかりと支えるために幅広の特注土台を付ける、ということですね。

ちなみに、窓枠の外周部では専用ソフトによるヒートブリッジ解析を行っています。
熱の損失が許容範囲内か。局所的に温度が低下して結露が発生する心配はないか。
構造面・温熱面双方でのチェックを重ねつつ、土台形状を決定しているのです。

給排水管の施工

土台敷きと並行して、基礎内部の給排水管も取り付けていきます。
床下は450mmと比較的高さがあるため、
配管工事も後々のメンテナンスも余裕がありますね。
将来的に使うかどうかは分かりませんが、床下にロボット掃除機を入れたとしても
配管が掃除の邪魔になることもなさそうです。

内断熱(ネオマフォーム50mm)の施工

外周部の土台を敷き終えたら、いよいよ内断熱を施工していきます。
厚み当たりの断熱性能としては国内でほぼ最高となるネオマフォーム断熱材。
基礎外周立ち上がりの内側部分に貼り付けていきます。

貼り付けが完了した状態がこちら。

ネオマフォームと基礎コンクリートは接着剤で貼り付け。
床下にも室内と同じ空気が循環するので、
ホルムアルデヒドを含まない無溶剤型を選びます。

更に、ネオマフォームから土台に向けて固定座金で留め付け。
加えて、土間コンクリートに固定した桟木で上から断熱材を押さえつけます。
長期に渡って基礎と断熱材の密着が続くように、接着剤だけに頼らない施工方法です。
(これは大工さんからの提案です!感謝!)

土台とネオマフォームの間には15mmの隙間ができてしまうので、
隙間が断熱欠損にならないよう防蟻系のウレタンフォームで埋めています。

上の画像は断面が分かりやすいですね。
左から、ネオマフォーム50mm、防蟻ウレタン15mm、
土台120mm(気密シート巻き上げ)、発泡ガラスボード100mm、という構成になりました。

一次防蟻処理

土台敷きと床下配管が終了した段階で、一次防腐・防蟻処理を行いました。
(二次処理は建物の構造体が終了した段階で行います)

前述した通り、基礎断熱の家では床下の空気が室内にも循環します。
住んでからは見えなくなる床下だとしても、使う薬剤には気を配る必要があるのです。
そのため、木材部分の防腐・防蟻処理は
ホウ酸による「ボロンdeガード」工法を選択しました。
基礎コンクリート貫通部からのシロアリ侵入対策には
同じくホウ酸系の「ボレイトシール」で行っています。

ホウ酸は国際的には標準的な防腐防蟻工法。
温暖地でシロアリ被害のとても多いハワイでも広く使われています。

雨に弱いというデメリットはありますが(養生しておけば問題になりませんが)、
人体への安全性や、長期の有効性という面では
日本で一般的な農薬系の薬剤よりも優れているのではないでしょうか。

寒冷地である佐久・軽井沢エリアではシロアリ被害があまり見られませんが、
それでも被害ゼロではありませんし、気候変動の影響でシロアリの生息域が広がり、
想定外の被害が起きる可能性も大きい
と考えています。
(地域の作り手はシロアリ対策の意識があまり無いのが正直なところなので…)
ホウ酸処理は施工コストも高くないため、これからますますの普及が期待できる工法ですね。

ネオマフォームを100mmから50mmにした理由

初期の図面では内断熱100mmでしたが、実際の施工では内断熱50mmにしました。
ネオマフォームを薄くすることで、当然断熱性能は落ちます。
それなのに何故薄くしたのか?
その理由は、基礎内部の結露リスクにあります。

建築地の佐久は省エネ地域区分では2地域寄りの3地域。
北海道の札幌と同じレベルの寒冷地です。
温暖地ではあまり問題にならない工法でも、思わぬリスクが発生します。

リスクの原因となるのが、基礎内断熱という工法。
基礎コンクリートの内側に断熱材を付けることで室内の温度は保たれますが、
コンクリートそのものは無断熱で、外気の影響をもろに受けます。
真冬のマイナス10℃~15℃という環境下、もし断熱材と基礎の間に隙間があったらどうなるか?
そこに結露が発生する可能性があるのです。

基礎外:発泡ガラスボード100mm、基礎内:ネオマフォーム100mm、という構成で
熱の伝わり方をシミュレーションするソフト「WINISO」で解析しました。
外気温が著しく低く、室内が比較的高温で多湿という条件下では、
基礎とネオマフォームの境目の温度が下がり、
露点温度に達する(=結露する)という結果
が出てしまいました。
(紛らわしくてすみませんが、上にある画像はその時の解析条件とは一部異なります)

断熱性能としては、発泡ガラスボードがλ=0.050[w/(m・K)]、
ネオマフォームがλ=0.020[w/(m・K)]と、2倍以上の差があります。
・基礎内側の断熱性能が強すぎて、床下の温度が保持されすぎる状態に。
・基礎外側の断熱性能が相対的に弱く、基礎コンクリートが冷えた状態に。

この条件が重なって、床下結露発生という結果が出たのだと思います。

こういった床下結露は基礎内外の断熱バランスを整えれば解決します。
内側のネオマフォームを50mmに減らすことで、
基礎と断熱材の隙間に結露が発生することはなくなりました。

これが、断熱性を落としてでもネオマフォームの厚みを減らした理由になります。

今回は発泡ガラスボードという特殊な断熱材を使ったことによるものですが、
一般的な住宅でも基礎内の結露が発生する恐れは十分にあります。
むしろ、外側に断熱材が一切無い基礎内断熱では、
床下結露発生のリスクは佐久平PHの比ではないほど跳ね上がるでしょう。
寒冷地での基礎内断熱の採用にはかなり慎重になるべきだと思います。

更に詳しく知りたい方は、
パッシブハウス・ジャパンの高橋理事のコラムをぜひご覧ください。
4~5地域での解析でも結露の可能性が高いので、2地域ならば推して知るべし、ですね。

土台敷き・基礎内断熱工事完了!

土台敷き・基礎内断熱工事が完了しました!
(土台同士を繋ぐ大引と、それを支える床束の工事も終わり)

木材にうっすらと白く見えるのがホウ酸。
土台と大引の接合部で気密シートに切れ目が発生したところは、
黒い気密テープで補強してあります。

これで床下までの構造・断熱・気密は万全となりました。
次回は建築工事の華、建て方(建前)についてです!

長くなりましたが、最後までお付き合いありがとうございました。

新津

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