こんにちは。新津組の新津です。
自宅(兼モデルハウス)工事の施工日誌の第9弾。
ついに断熱工事となりました!
パッシブハウスと言えば断熱、というイメージを持たれてる方も多いのでは。
実際には断熱はあくまでスタート地点で、そこから先の工夫が重要だったりするのですが…。
それでもこの厚さの断熱は、寒冷地信州と言えどなかなか見かけることはできないかと思います。
今回の記事では断熱工事のうち、建物内側におこなう「充填断熱」を解説します。
建物外側の「付加断熱」については次回にて。
それではご覧ください!
過去の施工日誌は以下のリンクよりご覧いただけます。
施工日誌①概要編
施工日誌②地盤調査編
施工日誌③地盤改良編
施工日誌④鉄筋工事編
施工日誌⑤基礎・コンクリート工事編
施工日誌⑥基礎断熱・発泡ガラスボード編
施工日誌⑦土台敷き・基礎内断熱編
施工日誌⑧建方(建前)編
充填断熱工事の様子
上が壁面の構成図。今回はこのうち、
「断熱材GW0.035 充填 t120」
「調湿気密シート」
を施工していきます。
熱抵抗値0.035のグラスウールを厚さ120mmで詰める、ということですね。
図面よりも実際の工事写真を見た方が分かりやすいと思いますので、まずそこから解説します。
ピンク色の材料がグラスウール。
柱間のサイズに合わせてカットし、手作業で詰め込んでいきます。
使用したグラスウールが上の画像。
はるばる北海道から来てくれた高性能断熱材です。
グラスウールは袋入りのものではなく、隙間に充填しやすい「裸グラスウール」を使います。
グラスウールが肌に触れるとチクチクするので現場では敬遠される、などということも一時期ありましたが、今の高密度品ではチクチク感はほとんどなくなりました。
充填断熱の概要とメリット・デメリット
現場写真で工事のイメージが把握できたかと思いますので、
充填断熱についての概要を解説していきます。
(ここの解説は長いので、工事の様子を見たい方は次の項まで読み飛ばしてください!)
充填断熱は国内で最もポピュラーな断熱手法。
建物外周の柱の間に断熱材を詰める(充填する)形となります。
断熱材の厚みは柱材の太さとほぼイコールになるため、一般的な木造在来だと105〜120mm厚になるでしょうか。
柱間というデッドスペースを断熱に利用することで、省スペース化が図れるのが利点ですね。
使用する断熱材は繊維系断熱材が基本となります。
繊維系はロックウールやセルロースファイバー、ウッドファイバーなど
さまざまな種類がありますが、最も普及しているのがグラスウールです。
繊維系ではなく、吹付けウレタンフォーム系が使われることも増えました。
断熱材に何を使うにしても、室内の湿気が断熱材に入り込むと
壁内で結露が発生する可能性が高まります。
それを防ぐために、断熱材と室内空間の間には防湿気密シートを施工するのが安全です。
※パッシブハウス「信濃追分の家」のように、結露計算を行った上であえて気密シートを省略するケースもあります。
が、これはかなりの上級者向けですね。
充填断熱は断熱の基本工法。
しかしいくつかの欠点が存在します。
ひとつは、断熱材の厚みに限界が出てしまうこと。
柱の太さが断熱厚の上限になってしまいます。上述したように105mm〜120mmほどです。
では、寒冷地での断熱厚の目安はどれくらいか?
北海道で普及している「北方型住宅」で言いますと、
壁の場合は(グラスウール換算で)標準が200mm。推奨が300mmです。
推奨に届かせるには充填断熱だけでは難しいということです。
もうひとつの欠点は、柱が熱橋(熱を集中的に伝えやすい部分)となってしまうことです。
柱で結露が発生するとまではいかなくても、室内温度への影響は大きいですね。
これらの欠点を補うために、充填断熱に付加断熱を組み合わせるわけですね。
付加断熱とは柱の外側にも断熱材を追加すること。
詳しい解説は次回におこないます。
充填断熱の次は気密シート
佐久平PH(予定)の解説に戻ります。
グラスウールを詰め終わったら、その上に「調湿気密シート」をぴったりと貼り付けていきます。
上の画像では、建方時に先張りしていた気密シートが見えますね。
気密シート同士を重ね合わせて、建物全体の気密層を連続させていくのです。
タッカー(建築用ホッチキス)でシートを柱に固定。
タッカー針穴からの空気漏れを防ぐために、気密テープで全ての針穴を塞ぎます。
このシートは高断熱高気密住宅において、とても重要な部材。
気密層:建物の内と外の空気の出入りを防ぐ
防湿層:建物の内と外の水蒸気の出入りを防ぐ(完全には無理でも、出入りするスピードを大幅に遅らせる)
2つの役割を持ちます。
今回使った「インテロ調湿気密シート」は一般的な防湿気密シートものより更に高機能なシート。
季節によって透湿抵抗(水蒸気の移動に抵抗する力)が変化し、壁の中の湿気を外に出しやすい働きがあるのです。
詳しいメカニズムは公式の解説ページを参照してください。
壁の次は天井の断熱
壁の気密シート貼りが終わったら、天井の断熱工事に移ります。
天井の断熱工法は大きく分けて「桁上断熱」と「天井断熱」の2つがありますが、今回は「天井断熱」を選択しました。
吹き抜けの勾配天井に断熱ラインを合わせる形です。
断熱厚は壁の120mmに対して、天井は400mm。
屋根の厚い断熱は夏の日射や冬の放射冷却の対策になります。
屋根方向は壁方向に比べて断熱の厚みを増やしやすい(敷地の大きさの影響が少ない)こともあるので、壁の3倍くらいは入れておきたいところです。
天井に木材で下地を組み、目の粗い不織布シートを貼っていきます。
天井には壁とは種類の違うグラスウールを使い「吹き込み(ブローイング)工法」で施工を行います。
天井断熱に適したブローイング工法
吹き込み工法には上の画像のグラスウールを使用。
北海道より更に遠く、ドイツからの輸入品です。
壁の断熱材は布団のようなマット形状でしたが、こちらはパラパラと細かい羽毛状。
不織布シートに小さい穴を開け、ホースを差し込んで吹き込みを行います。
ブローイング工法は断熱を厚くしても作業量があまり変わらず、
400mmや600mmのような分厚い断熱もスピーディに施工できます。
50坪程度の大きさの家であれば一日で作業が完了します。
頭上にマット状グラスウールを400mm敷き込むのはとても大変ですが、ブローイングなら簡単です。
凹凸の多い形状にも隙間なく充填できるのが利点です。
シートがパンパンになるまで吹き込んでいきます。
触った手の感触で吹き込み加減を調整する、熟練の業です!
壁と同じく調湿気密シートを貼り付け。
天井と壁のシートを重ねて、気密テープで密閉します。
充填断熱完了。その効果は?
吹き抜けも綺麗に仕上がりました。
これで壁と天井の充填断熱・気密工事は完了となります!
この工事は真冬に行いましたが、断熱工事の前後で現場作業には体感の変化が。
窓の設置がまだですが、開口部はブルーシートで塞いでいる状態。
その状態であっても、断熱工事を行うことで暖房用ジェットヒーターの効きが明らかに良くなりました。
また、吸音効果も感じ取れるようになりました。
グラスウールの細かい繊維が、室内の話し声や作業音の反響を抑えてくれたということです。
工事が進むにつれて快適な家に近づいているようで楽しいですね。
次回は外側の付加断熱をレポート予定。
その後は、パッシブハウスの最重要工程とも言っていい、窓工事です!
お楽しみに!
新津
パッシブハウスの建築状況をTwitterとInstagramで公開しています!
Tweets by satoru_niitsu