全館空調の電気代を徹底比較してみた:圧倒的な省エネNo1システムは?

(タイトル画像はChatGPTの考えた「全館空調」)
こんにちは!
長野県の建設会社 新津組の代表 新津です。

今回のテーマは全館空調!
全館空調はどういったものなのか?各社どういったシステムを使っているのか?
…といった内容であれば他のウェブサイトでも調べることができるかと思います。
なので、本ブログではズバリ「電気代」をメインに解説しようと思います。

大手ハウスメーカーから工務店まで、各住宅会社が採用している18コの全館空調システムをリサーチ
1年間にかかる電気代をランキング形式で公開し、上位のシステムについて概要を説明していきます。

また、ブログは前編・後編の構成としました。
前編となる今回では電気代ランキングを発表。
後編ではランキング1位のシステムを参考にし、全館空調の電気代を下げる方法を解説する予定です。

今回の目次は以下の通りです。
・はじめに:全館空調の省エネ性能は電力消費量(kWh)で比較すること
・全館空調システム 年間電気代ランキング
・トップ5の概要を説明
・おわりに

今回も長い記事ですが、どうか最後までお付き合いください!

はじめに:全館空調の省エネ性能は電力消費量(kWh)で比較すること

実は、全館空調の省エネ性能を「電気代」だけで判断するのはNGです。
電気代は電力会社や契約プラン、政府の補助金、時間帯別単価などの影響で大きく変動し、極端な話メーカー側がいくらでも数字を操作できてしまうからです。
例えば、電気料金の安いプランや特定の計算方法を使えば、電気代を安く見せかけることもできてしまいます。

一方で、「電力消費量(kWh)」はごまかしが効かない指標です。
同じ条件でシステムを比較するには、電気代ではなく消費電力量を見ることが重要になります。

ただし、全館空調の消費電力量は住宅の性能や住み方によって大きく変わるため、単純な比較が難しい面もあります。それでも実際のシステムの消費量を測定し、公表しているメーカーは誠実だと言えます。なぜなら、自社製品に自信がなければ正確なデータを公開できないからです。
つまり、消費電力を公表しているシステムほど、省エネ性能に自信がある = 実際にエネルギー効率が高い傾向がある、と言えるのです。

本記事のランキングでも、各全館空調システムのうちメーカー公式が電力消費量を公開しているか、もしくはユーザーの測定データによって確認できるものを選定しています。

全館空調システム 年間電気代ランキング

まずは電気代計算のプロセスを簡単に説明します。
ごくごく単純な計算にし、データの加工は最小限に留めてみました。

①各システムの電力消費量kWhを調査(消費量データが確認できなかったシステムはランキング選外)
②家の大きさの影響を揃えるため、延床面積1㎡あたりの電力消費量を算出
③一般的な家の大きさを延床面積30坪と仮定して、②から家1軒あたりの電力消費量を計算
④電気代単価を35円/1kWhとして、③に掛けて年間の電気代を導き出す

それではいよいよ、電気代ランキングの発表です!

圧倒的No.1は我が家で使用している「ゼンダーコンフォホーム」で、電気代は年間54,439円!(年間消費量1,555kWh)
面積補正を掛ける前の電力消費量でも1位で、電気代(≒㎡あたり消費量 と 30坪換算消費量)では2位以下と大きな差を付けました。

2位は「YUCACOシステム」の89,552円。(年間消費量2,559kWh)
3位は「Z空調」の129,207円。(年間消費量3,692kWh)
4位は「OMソーラー」の130,805円。(年間消費量3,737kWh)
5位は「エアボレーネクスト」の136,631円(年間消費量3,904kWh)、と続いています。

当然ながら、全館空調の消費電力は外気温の影響を強く受け、寒い地域ほど消費が多くなります。
ランキング1~3位のシステムは、寒冷地(省エネ地域区分2・3地域)でも良い成績を出していますね。
そのため、次の項ではトップ3の「ゼンダーコンフォホーム」「YUCACOシステム」「Z空調」をメインに講評していきたいと思います。

なお、今回調査した全18システム中、なんと13コのシステムが選外となりました。
五十音順では
エアシーズン(積水ハウス)、エアテリア(ミサワホーム)、エアドリームハイブリッド(住友林業)
エアヒーリング(大和ハウス工業)、エアロテック(三菱地所ホーム)、エアロハス(パナソニック ホームズ)
快適エアリー(セキスイハイム)、さらぽか空調(一条工務店)、スマートエアーズ(トヨタホーム)、スマートブリーズ(三井ホーム)
匠空調(アキュラホーム)、まるっと空調(ユニバーサルホーム)、ロングライフ全館空調(ヘーベルハウス)

です。

電力消費量が分からないことには比較のしようがありません…!
これらのメーカーさんは是非データの収集と公開を進めていただき、ランキングの上位を目指して欲しいですね。

5位「エアボレーネクスト」と4位「OMソーラー」について

これら2つはデータの引用元を紹介するだけに留めます。

キムラ社「エアボレーネクスト」は公式パンフレットに電力消費量が記載されています。
計測対象物件は延床面積93.98㎡、所在地は宮城県仙台市(地域区分4)です。
30坪に換算した場合の消費量は3,904kWhで、ランキング1位と比べると約2.51倍でした。

https://kimuranet.jp/wordpress/wp-content/uploads/2024/02/airvolley_catalog.pdf

「OMソーラー」は公式サイトではデータが公表されていませんでしたが、日本建築学会による調査資料がありました。
計測物件は資料中の物件c。延床面積109.3㎡、地域区分6です。
なお、消費電力の計測期間が1年間に満たないものだったので、月平均から年間消費を算出しています。
30坪に換算した場合の消費量は3,737kWhで、ランキング1位と比べると約2.40倍でした。

https://omsolar.jp/system/wp-content/uploads/2021/06/40379.pdf

3位「Z空調」について

「Z空調」(ゼックウチョウ)は、住宅メーカーヒノキヤグループ(現在のヤマダホームズ)が2017年に販売開始した全館空調システム。
エアコンはダイキン製で、換気装置は協立エアテック製。両者を直接接続したダクト式・第一種全熱熱交換換気・空調システムで、全館空調としてはポピュラーなタイプです。
昔は全館空調は大手ハウスメーカーによる高級品、といった位置づけでしたが、比較的ローコストで導入できるZ空調の登場以来、一般住宅への普及が進んでいます。
全館空調と聞いて多くの人がイメージするのがこのシステムかも知れませんね。

実測した電力消費量を公式サイトで大きくアピールしており、製品への自信がうかがえます。
寒冷地と温暖地別、夏冬別で消費電力・電気代を併記しているのも分かりやすく、メーカーの姿勢として素晴らしいと思いました。

https://www.hinokiya.jp/z/p3/

年間電力消費量は4,307kWh。
延床面積30~40坪の住宅で測定した、とあるので、本ランキングでは間を取って、延床35坪の建物で消費した電力量として考えてみます。
30坪に換算した場合の消費量は3,692kWhで、ランキング1位と比べると約2.38倍になっています。

総じて、Z空調は全館空調の中でも標準的なモデルという印象です。
各システムを比較する際のベンチマークとも言える存在かもしれませんね。

2位「YUCACOシステム」について

「YUCACOシステム」は一般社団法人YUCACO推進機構が開発。
加盟店を全国で募り、それらグループに所属した住宅会社・工務店が使っているシステムです。
建物2階にエアコン専用の空調室を作り、そこからファンやダクトで家全体に冷暖房空気を送り込んでいきます。
エアコンはダイキン製か三菱製。換気システムはパナソニック製の全熱交換換気ですが、エアコンと直接接続はせず、空調経路と換気経路とが上手にミックスされるように設計するようです。

他システムと一線を画するのが、全国のモデルハウスの電力消費データをリアルタイムで実測・公開していること。
部屋別の温度推移や、期間を指定しての電力消費量・電気代も自由に見ることができます。これはすごい…!
本ランキングでは北海道札幌市にある 株式会社アルティザン建築工房さんのZEHリノベーション新川モデルハウスのデータを引用させていただきました。

年間電力消費量は3,075kWh。
30坪に換算した場合の消費量は2,559kWhで、ランキング1位と比べると約1.65倍になっています。
寒冷地札幌で、新築ではなくリノベーションでこの数値が出ているのは驚異的だと思います。
設計と施工には相当の慣れが必要そうですが、YUCACOシステムはとても良い性能が出てますね。

http://webfha.jp/view?target=shinkawa

1位「ゼンダーコンフォホーム」について

「ゼンダーコンフォホーム」はスイスZehnder社が開発した全館空調・換気システム。
パッシブハウス・ジャパンの加盟企業が2022年頃から採用しています。比較的新しい製品ですね。

全館空調としては一般的なモデルであるダクト式・第一種全熱熱交換換気・空調システムですが、独自の特徴がいくつかあります。
エアコンと換気装置を完全に一体化。室内の空気質をセンサーで読み取って風量を自動制御。Wi-Fiで遠隔操作可能。オンラインアップデートで制御ソフトを更新。PHI(パッシブハウス研究所)に認定された高い熱交換効率。浴室やトイレなど従来の全館空調では組み込みNGな場所でも換気経路に取り入れることができる。などなど。

日々のメンテナンスも簡単になっているのは住まい手にとって嬉しいところです。
例えば、全館空調のスタンダードであるZ空調
・エアコンのフィルター清掃を2週間に1回
・換気装置のフィルター清掃を1ヶ月に1回
・換気装置のフィルター交換を6ヶ月に1回

が公式に推奨されています。

対して、ゼンダーコンフォホームでは
・換気装置のフィルター交換を6ヶ月に1回
だけでOKなのです。
(両者ともこれに加え換気グリルやガラリの清掃が必要になる場合があります)

ゼンダーのフィルター交換についてはこちらの記事でレポートしています。
ゼンダー(換気空調システム)のフィルターを交換してみた

閑話休題。
それでは、全館空調電気代ランキングで1位となった、我が家のゼンダーコンフォホームの電力消費量はこちら!

年間の電力消費量は2,851kWh。温度設定は夏が26℃、冬が24℃でした。
家が大きめ(55坪)なので、30坪に換算した場合の消費量では1,555kWhになります。
ランキングを5位から見ていくと、1位のゼンダーでガクンと消費量(≒電気代)が落ちるのがお分かりかと思います。

なお、この数字は太陽光発電の影響を除いた、システム本体ありのままの消費量です。
実際は太陽光発電による自家消費・余剰売電で、これよりも更に電気代が削減できています。
私の家全体&電気自動車1台で実際にかかった年間の光熱費(電気代+都市ガス代)は、余剰売電を差し引いて「プラス26,772円」。
つまり、全館空調を使いつつも、1年間で約3万円のお金が戻ってきているのです。

なぜここまで電気代が安く済むのか?
これについては後編で解説してまいります!

おわりに

今回の記事は以上となります。

近年の家づくりで注目の集まる全館空調ですが、まだまだ情報不足の感は否めませんね。
大手メーカーでも実測データを公開していないところが大半、というのは調査してみて驚きました。
今回ランキング1位としたゼンダーコンフォホームにしても、サンプルは私の自宅一例のみ。
ゼンダーは発売からまだ時間の経っていない製品なので仕方がない面もありますが、本来であれば十戸・百戸単位でkWhのデータを収集したいところです。

条件もバラバラで、我ながらあまり信憑性のないランキングです(笑)
この記事をあまり真剣に受け取らず、ひとつのお遊びとして捉えていただければ幸いです。

それでは後編にてお会いしましょう。
ここまで見ていただき、ありがとうございました!

新津

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