寒冷地のEV生活!日産サクラの電費と実用性を検証してみた

こんにちは!
長野県の建設会社、㈱新津組 代表の新津です。

今回のブログは電気自動車(EV)!
一見パッシブハウスとは関係ないように見えるテーマですが、実は今や省エネ住宅と電気自動車は切っても切り離せない存在に。
私の自宅では、充電のほぼ100%を屋根上の太陽光発電で行い、夜は逆に電気自動車から自宅へ電気を送ったりして使っています。
そのため、この記事も「パッシブハウスに1年間住んでみた」シリーズとして公開することにしました。

本記事では、私が乗っている軽EV「日産サクラ」の走行距離や電費、充電にかかった電気代などをすべて公開

「寒冷地(長野県)で電気自動車って、実際どうなの?」
「ガソリン車と比較して、ぶっちゃけ損なの?得なの?」

という疑問に、リアルなデータを交えながら応えていきます。
これからEVの購入を検討されているかたには特に参考になる内容かと思います。
最後まで読んでいただければ嬉しいです!

今回の目次は以下の通りです。

・はじめに:自宅の電気自動車の使いかた
・月間走行距離と電費
・充電に必要な電気代と、ガソリン車とのコスト比較
・充電コストを各パターンでシミュレーション
・寒冷地での電気自動車の乗り心地は?
・まとめ
・おわりに

はじめに:自宅の電気自動車の使いかた

はじめに、我が家での電気自動車(EV)の使いかたを簡単に書いておきます。

私が乗っているのは軽EV「日産サクラ」
国内2024年度上期の電気自動車販売数でNo.1を記録している人気車です。
2022年10月に納車。2023年8月の新居への引っ越しからは、100%自宅充電で運用しています。

サクラはいわゆるセカンドカーとして使っています。平日の子どもの送迎や近所の買い物等が主な役割。
土日の家族揃っての移動にはハイブリッドのミニバン(日産セレナ)に乗ることが多いです。
日本の地方都市としてよくあるパターンですね。

住まいは長野県佐久市。長野県のなかでも特に寒さが厳しく、冬の最低気温はマイナス10℃を下回る寒冷地です。
雪の量は多くないものの、標高が高く山あいで道路の起伏が激しく、一度降った雪は日陰では春まで残り続けてしまう。そんな地域です。

充電にはV2H(ブイツーエイチ:Vehicle to Home)システムを使っています。
太陽光発電の余剰分でEVを充電し、夕方~夜にEVから家へ給電、朝に運転して、日中にまた充電、というサイクルです。
詳しくは別のブログ記事を参照ください。

月間走行距離と電費

では、サクラの走行距離と電費を見ていきましょう!
サクラは「NissanConnect:日産コネクト」という電子サービスで、スマホアプリ上で走行距離と電費を確認することができます。
自宅充電をはじめた時から1年3ヶ月分のデータを一覧にまとめてみました。

この期間の月間走行距離は、平均で約350kmとなりました。
日本の軽自動車の月間走行距離はおおむね400km※なので、平均よりはやや少なめですね。
使うのは平日が中心。1日あたり15kmくらい乗る感じでしょうか。

一般社団法人 日本自動車工業会 軽自動車の使用実態調査報告書(2024.4.17)より

電費は平均で6.4km/kWh
ちなみに電費とは、ガソリン車で言う燃費のようなもの。電気自動車が1kWh(1キロワットアワー)の電力でどれだけ走れるかを示す指標です。
この場合は1kWhの電力量で6.4km走ることができていた、ということですね。

月別の電費を見ると、主にエアコンの使用頻度で大きく変わるようです。
エアコンがほとんど要らない4・5・6月では電費7.3~7.6km/kWhと好成績。
対して、夏(7・8月)や冬(1・2月)は5.3~5.4km/kWhと、春と比べて約28%ほど電費が悪化しています。
「EVは冬に効率が下がる」という説もありますが、実データを見ると冬だけ特に悪いということはなさそうです。(この期間の最低気温はマイナス10℃でした)
平均値を基準にすると、最も悪い時期で電費の悪化は約15%。
私個人の感覚としては、季節感の変動、特に冬の落ち込みはもっと大きいと思っていたので意外な結果になりました。

充電に必要な電気代と、ガソリン車とのコスト比較

それでは、実際にかかる金額を見ていきましょう!

まずは電気自動車(EV)のコストを計算します。
・月の平均走行距離は349.2km。これを満たすために必要な電力量は、走行距離÷電費で 54.7kWh
・充電には実測で25.9%のロスが発生する(上記V2H記事を参考)ので、実際に必要な電力量は 73.9kWh
・これを太陽光発電余剰分(売電すると1kWhあたり17.0円)ですべて充電すると 1,256円
となります。

次にガソリン車のコストを計算
・月に349.2kmを燃費20km/Lで走ると仮定。必要なガソリン量は、走行距離÷燃費で 17.5L
・現在のガソリン代(185.5円※)で換算すると 3,239円
です。
長野県のレギュラーガソリン185円50銭 2週連続の値上がり 全国最高値は17週連続(2024.12.4信濃毎日新聞)

1kmあたりの価格で比較すると、EVは3.60円で走れるのに対し、ガソリン車では9.28円かかります。(2.6倍)
月のコスト差は1,983円。1年間で23,796円。軽自動車の平均保有年数(8.3年※)での総コスト差は197,509円になります。

※上記 日本自動車工業会調べ

計算結果を一覧表にまとめました。
(Excelの端数処理の関係で、上に書いたものとは数円単位の差が出ています)
私の家での、現在の価格での使いかた、をAパターンとしました。

次の項では、走行距離や電気代、ガソリン代が変わった場合に総コストはどう変わるか?
を、さまざまにシミュレーションしてみることにします。

充電コストを各パターンでシミュレーション

パターンBはガソリンが値上がりした場合
2024年12月現在、ガソリンは政府の補助金で価格が抑えられています。(15.2円/L)
これが終了するとガソリン価格は200.7円/L。
その場合、EVとガソリン車のコスト差は月間で2,252円。保有期間内では224,344円の違いになります。

パターンCは走行距離が増えた場合
月間350kmから500kmに伸ばしてみました。
距離が増すと電費・燃費ともに改善される傾向にありますが、そこはパターンAから変えていません。
この場合のコスト差は月間で2,845円。保有期間内で283,378円です。
EVで走る距離が増えれば増えるほど、ガソリン車とのコスト優位性が出てきますね。

パターンDは、充電を太陽光余剰ではなく電力会社から買った電気で行った場合
中部電力スマートライフプランの夜間電力は、16.5円/kWhです。(2024.12.6時点。激変緩和措置は終了している)
走行距離は500kmです。この場合では月間コスト差2,896円、総コスト差288,418円となります。
充電代がガソリン代に対して安いほどEVが有利になりますが、電気代は電力会社や各契約プラン、ひいては国際情勢によって大きく変わってしまいます。そのため、買電での充電コストはどうしても上下してしまいがちです。
太陽光発電の余剰分を利用するのがベストではありますが、現状では夜間電力による充電でも問題なく運用できるかと思います。

最後のパターンEは、電気自動車にとって好条件が揃った場合
すなわち、長距離(600km)で使い、太陽光余剰の価格が下がり(10年間の固定価格買取制度が終了=卒FIT)、ガソリン代が値上がりした状態、です。
この場合の月間コスト差は5,009円。保有期間内の総コスト差は498,882円です。
ここまで来ると購入価格含めた金額面でEVが完全に優位になるかもしれませんね。

中東情勢の不安定化や、世界の脱炭素化によるガソリン需要の減少を考えると、将来的にガソリン代は上昇する可能性が高いと思います。
対して、自宅に搭載した太陽光発電システムであれば、確実に低価格での充電を行うことができます。
10年後を想定したパターンEですが、実際にはこれよりも更にコスト差が広がっていることも十分にありうるのではないでしょうか。

(このブログ執筆中に「ガソリンにかかっている暫定税率が廃止される」というニュースが流れてきました。
 激変緩和措置15.2円と暫定税率25.1円で相殺されると、現在より9.9円値下がりすることになります。
 それでも長期的に見るとガソリン価格上昇は避けられないかと思います。ちなみに過去20年では年間3.1円のペースで上がっているようです。)

なお、これらシミュレーションはあくまで走行のみのコストを示しています。
V2H活用による電気代節約効果や、太陽光発電の自家消費率向上の効果は含まれていないことに注意が必要です。
V2Hを最大活用したケースでは、家庭の電気代削減で年間約14万円の経済効果が受けられる、と過去の記事で書いたこともあります。
EVは住宅と組み合わせて運用することで、さまざまな恩恵を受けられることも魅力のひとつですね。

寒冷地での電気自動車の乗り心地は?

データ面・コスト面でのお話はこれくらいにして、この項では寒冷地で2年間EVを運転した私個人の感想を書いてみます。
結論から言うと、寒冷地や山間部ではEVがとても向いていると感じました。

まず、峠道や雪道での走りやすさ
長野県は町と町の間の移動で日常的に峠越えがあり、冬の日陰にはブラックアイスバーンもあったりします。
サクラは2WD(前輪駆動)ではあるものの、滑りにくく安定した走りです。
モーター制御でトルクの制御をきめ細かく行ってくれるので、滑りやすい道でもタイヤが空転しにくいのだと思います。
また、下り坂では回生ブレーキ(ガソリン車で言うエンジンブレーキ)がとてもよく効きます
急な下りでもブレーキを踏む必要がほとんどなく、アクセルの調整のみで運転できるので疲れにくいです。
減速に使うエネルギーがバッテリーの充電にも使われるので、坂道の上り下りを頻繁にしてもあまり電費が悪化しないのも利点です。

冬場の車内がとても暖かいのもありがたいです。
シートヒーター・ステアリングヒーターがあるので、手・背・おしりが冷たくなりません。
特に良いのが、エアコンが乗車直後からハイパワーで動いてくれること!
ガソリン車ではエンジンが温まるまで温風が出ないのに対し、サクラの高効率ヒートポンプエアコンは、家庭用エアコンと同様、スイッチオンですぐに作動してくれます。
屋根付きガレージに停めてあるおかげもあり、氷点下環境でも暖気や霜取りなしですぐに発進できるのは極めて便利です。

「NissanConnect:日産コネクト」アプリを使えば、乗る前にエアコンを付けたり、施錠の有無を確認したり、周辺の充電スポットの空き状況を検索したり(私は外の充電器を使いませんが)することもできます。

上でも書いたように、運転にかかるランニングコストで有利なのもいいですね。
長野県はガソリン価格が全国最悪レベルに高い上、ガソリンスタンド自体も少なくなって来ています。
これに対し、太陽光発電の効率は長野県が全国トップクラス!自宅充電を太陽光で行うことができれば、電気代をかけずに自宅のみで充電が完了します。

「自分の家でつくった電気だけで走っている」という運転感覚は何とも言えず面白いです。
小回りが効き、きびきびとした走りもあって、自分の足で自由に駆けているような物理的・精神的な軽快感があります。
運転という行為自体がより楽しくなりました。

2014年の大雪災害では、地域外へ繋がる道が1週間近く塞がれ、ガソリンスタンドに長蛇の列ができたり、販売量に制限がかかったりしていました。
自宅・太陽光充電であれば、1日数時間晴れ間が出てくれれば十分に充電が可能なので、災害にも強いと言えます。V2Hと組み合わせればEVから自宅への給電も可能になります。
走行距離の短さも、セカンドカーとして運用する分にはまったく問題ありませんでした。

ちなみに、今の走行距離の倍、月600kmを走っても、1日あたりの電力消費は満充電から3割も減らないです。
計算上、サクラ・自宅充電オンリーでの月間走行距離は1,800kmくらいまで行けそうですが、ここまでの距離を走る人は稀かなー、と思います。
自宅充電の環境を整えられるなら、サクラは大いに活躍してくれるはずです。

まとめ

記事の内容をまとめます。

・日産サクラ、寒冷地での平均電費は6.4km/kWh
・年間の平均電費を基準にすると、夏場と冬場は15%ほど電費が悪化する
・悪化の理由はエアコンの使用で、冬だけ特に効率が落ちるということはない
・ガソリン車とのランニングコスト差は、月間で2千円~5千円。軽自動車平均使用期間では20万円~50万円ほどの得になる
・V2Hを利用するなど、住宅との組み合わせで更に有利になることもある(試算では電気代削減効果が最大で年14万円見込めた)
・寒冷地や山間部ではむしろEVが向いている
・自宅充電の環境を整えられるのであれば利用シーンはかなり広い

おわりに

今回の記事は以上になります。
客観的にコスト比較を行ったつもりではありますが、全体的にはかなり「サクラ推し」の内容になってしまいました…。
EVに対する意見はさまざまあるかと思いますが、いざ実際に乗ってみると、金額面、実用面でとても便利なのは間違いありません。

真価を発揮するためには自宅で充電環境が必須となりますが、それも意外と簡単に導入することができます。
EVが気になっている方はぜひ、充電設備工事の見積もりを取ってみたり、試乗に出かけてみたりしてみてください!

ここまで読んでいただきありがとうございました。
また次回のブログでお会いしましょう!

新津

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